物価上昇を上回る賃上げを実現するために、中小企業をはじめとする事業者の取引を適正化し、賃上げの原資を確保するための価格転嫁をさらに進めていくことが求められています。
下請代金支払遅延防止法の「下請事業者」が「中小受託事業者」に、「親事業者」が「委託事業者」に改められ、法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」とされ、取引適正化のための規制が強化されるとともに、いわゆる「下請」という呼称がなくなります。
支払遅延等としては次のような改正が行なわれました。
(1)協議を適切に行なわない代金額の決定の禁止
中小受託事業者から求めがあったにもかかわらず、委託事業者が代金に関する協議に応じない、または必要な説明や情報の提供をしないまま一方的に代金の額を決定する行為が禁止されました。
(2)手形払等の禁止
支払手段としての手形払いが禁止されました。
電子記録債権やファクタリングなどの支払手段についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは併せて禁止されています。
(3)運送委託の対象取引への追加
製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が、規制対象の取引に追加されました。
(4)従業員基準の追加
適用基準として従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分が新設され、規制および保護の対象が拡充されました。
(5)面的執行の強化
指導・助言等の監督行為を行なう所管当局に、対象事業者の事業を所管する省庁の主務大臣が追加されました。これにより、公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁の3組織が連携して調査・監督に当たることとなりました。
下請中小企業振興法も法律名が「受託中小企業振興法」に改められ、用語の見直しとともに対象事業者への支援が強化されました。
改正法は、令和8年1月1日(一部の規定は公布の日)から施行されます。
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック